普段、私たちにとってあまりに身近な存在である「声」-。
このワークショップでは演劇的エクササイズを通じて声を豊かで発見に満ちたものとして体感、再認識してみます。
さらにワークショップ後半では、広告のキャッチコピー、インタビュー、小説、絵本、詩、エッセイや戯曲の台詞など、古今東西ありとあらゆる言葉を皆さんそれぞれ声に出して味わってみます。
あなた自身の自由な声で世界に触れてみることで新たな自分との出会いを楽しんでみましょう!
まずは全員の名前を楽しみながら覚えることから始めます。
「なまえ鬼ごっこ」と身体と頭を使いながら、名前を呼ぶこと・呼ばれる事に慣れていきます。
俳優教育のトレーニングとして実践されるシアターゲームは、ルールの下にお互いに協力したり勝ち負けを楽しんだりと、自然で活発な交流を促すのに最適です。
覚えた名前を早速使いながらマルチタスクを成立させていく「インポッシブル・ゲーム」。白熱の真剣勝負です!
「こえとことばの実験室」ワークショップの様子(写真提供:世田谷文学館様)
本ワークショップの目的は演劇作品の上演ではなく、俳優訓練や演劇教育のエッセンスを通じて、普段はその手触りをあまり意識することのない「声」の豊かな可能性を新たに発見することにあります。
まずは身体の開放をねらいとして「3つのスピードで歩くエクササイズ」、ペアになって行う「ミラーワーク」にチャレンジします。日常の身体性から解放され、相手と交流が活発にできる状態になってきたら、次は声のウォームアップです。
国内外のプロの演劇の現場でも実践されるヴォーカルウォームアップを体験します。そして内なる創造性を刺激しながら声と身体の自由さを深めていくペアワーク「声のジェットコースター」で、外からの変化や刺激を受け入れるための感応性を準備します。
小説、絵本、詩、料理雑誌のレシピ、広告のキャッチコピー、商品の説明書、インタビュー書き起こし、エッセイ、戯曲の台詞、手紙ー全て私たちの世界にある「ことば」です。
古今東西ありとあらゆる種類の言葉を書籍で、手書きの便箋で、チラシ一枚で、デジタルデバイスで・・・インスタレーション的に展示した空間へと参加者の皆様を誘導します。
ここまではグループやペアでの交流をしてきましたが、この展覧会ではそれぞれ新たな言葉との出逢いをおもいおもいに味わってもらいます。そして声に出して読んでみたいお気に入りのテキストを一つ選び、どうして好きなのか、何に心が惹かれるのか、じっくり想いを巡らせます。
寺山修司『地球空洞説』| dancyu『ねぎは鍋』| ネスレ ミロ(商品パッケージ説明文)| 松村圭一郎『はみだしの人類学』| 谷川俊太郎『バウムクーヘン』| ハイヤーム『ルバイヤート』| バイロン『恋がいつまでも』| リサ・ラッツ『パッセンジャー』| 笛美『ぜんぶ運命だったんかい』| ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』| 太宰治『きりぎりす』
どのことばが気に入ったのか、どうしてそのことばを選んだのか。講師がひとりずつ公開インタビュー形式で質問を投げかけます。すでにここまでの2時間でエクササイズやゲームを通して解放された声を手にした参加者の皆さんからは、自ずと想いが声に乗って溢れ出します。
聴こえてくるのは、どれも紛れもなくそれぞれの人生が乗ったアイデンティティとしての声です。
そして前半で経験した身体、声のエクササイズの要素を使って講師がアドバイスを伝えます。内面にあるオリジナリティがよりはっきり、より明確に、声を通して外へ開かれていくためのお手伝いをいたします。
世田谷文学館・どこでも文学館とは?
公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館主催の主に子どもを対象にしたワークショップ・教育プログラム。
内容は文学に関するアート、スポーツ、哲学など幅広く、各ジャンルのプロが講師として招かれています。
一年を通して様々なプログラムを企画。世田谷文学館をはじめ、区内の小・中学校、高校、その他公共施設を会場として実施されています。
私自身が受けてきた演劇教育・俳優訓練の根幹にある「声」のトレーニング。そのエッセンスを演劇の枠を超えて広く一般の皆さんと共有したいーその思いから、このワークショップを始めました。今回、子どもから大人まで、その日初めて顔を合わせた参加者ひとりひとりが、それぞれの人生から生まれる唯一無二の「声」を届けてくれました。世田谷文学館様からも大変高く評価いただき、早くも来年度に第二弾の実施を予定しています。自己表現の可能性を広げる意味においても、カウンセリング効果の側面からも、またコミュニケーションの形成という観点からも様々な意義を持ったプログラムとして展開していきたいと思っています。
これからもこのワークショップをより多くの方々と共有できることを楽しみにしています。
俳優 福本鴻介